もう年末じみてまいりました。
今年の漢字は「絆」だそうですね。「絆」を再確認する年でした、本当に。
幸せなんかも改めて感じながら、まぁ振り返り記事はおいおい上げます。

さて、舞浜やそれ以外でも絶賛クリスマスモードですね。クリスマスといえば、そう、ダッフィーなんですよ。今じゃ「何故?」と思う人も多いのかな。ディズニーシーで生まれた奇跡の熊「ダッフィー」をまとめてるところがあんまり無かったので、今日はそれをまとめます。

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2004年のハーバーサイドクリスマス、そのタイミングであの熊は登場しました。厳密には直前かな。ただし名は「ディズニー・ベア」として。元を辿れば本国のディズニーパークで登場した熊の人形でした。名前も違えばストーリーも違う。ティンカーベルが魔法をかけた熊の人形だったんですね。グリーティングはニューヨークエリア。販売していたのは当時から「アーント・ペグズ・ヴィレッジストア」でした。それが一年後、東京ディズニーシーでのみ「ダッフィー」という名がつけられ、ストーリーも変えられたのです。

「ダッフィー」という対象を分析する上で非常に面白い点は、販売開始直後から爆発的ヒットをしていたわけではないこと、舞浜史上最大のヒット商品となったこと、パークの様相を変えてしまったこと。あたりでしょうか。一体何故なのか。

そもそも「ダッフィー」は何故そんなに魅力的なのか。これがただの熊の人形であれば、世間に溢れる同様のそれと大差なかったでしょう。これがディズニーシーというパークと結び付いたことで、今まであり得なかった展開を見せることになったわけです。簡単にいってしまえば、ディズニーパークの人気の高いグッズのすべての特性を持ち合わせていること。

パークでは子供に特に人気なのがキャラクターのぬいぐるみです。誰しもが小さい頃、ショップに並ぶぬいぐるみに憧れを抱いたんじゃないでしょうか。すぐに消費されるサービスばかりのパークの中で、形があり、ある程度の重みも感じられるぬいぐるみは子供の満足度も高いのです。ダッフィーはまさにそのぬいぐるみです。

そしてオリジナリティ。レザーブレスやストラップ、アクセサリーなどパーツを組み合せ、自分だけの商品が作り出せる、という形態のグッズは人気が非常に高いです。TDL25周年時の「ドリームキー」という商品は会計まで何時間待ちにもなったヒット商品でした。ダッフィーは現在Webサイトから衣装用の型紙がダウンロードできます。つまりオリジナルの服を着せる事ができるわけです。そうすれば自分だけのダッフィーの完成です。パーク内でもイベント毎にダッフィーのコスチュームが売り出されるので、着せ替え人形として、特に女性に人気です。またコスチュームを集める、というコレクタブル商品という特性も持っているわけです。

最後に身につけられるアイテムである事。厳密には持ち歩く(連れ歩く)ですけどね。パーク内では何よりカチューシャやファンキャップ、パスケース、ポップコーンバケットと、ディズニーのパーク内でよく見る“パークルック”に欠かせないグッズがよく売れます。日本特有のものであるとも思われますが、そんな中でダッフィーは“大人でも”抱いてパーク内を歩ける、という新しいスタイルを定着させることに成功しているのです。すなわち“パークルック”の典型として確立できちゃってるんですね。

「ダッフィー」という名前と新しい物語を与え、ディズニーシー仕様に変えたのはオリエンタルランドですが、実はヒットの為に特段戦略的に取り組んだわけではありませんでした。工夫した事といえば1、ディズニーシーのみでの限定販売とした事。2、お土産袋に入れるだけでなく「抱いていかれますか?」という選択肢を会計時に客に与えた事。上記2点くらいなものです。1を徹底的に行ったことでまずブランドを確立することができました。ディズニーシーのみでしか買えない希少性。これもやはりヒット商品にはある程度必要な条件かもしれません。そして何より2が前述の“パークルック”の新しいスタンダードを生んだだけでなく、持ち歩くゲスト一人一人がパーク内で、あるいは販売の無いディズニーランドで、広告塔となることで更なる認知度の向上につながったわけです。些細な工夫ではありますが、かなり重要な“仕掛け”であった事は確かです。

商品自体に魅力が多分にあることはおわかりいただけたかと思います。これが更に年々浸透していく様が非常に興味深いのです。前述の通り、「ディズニー・ベア」として登場したのが2004年の冬、そこから一年後の2005年に「ダッフィー」として商品展開が始まり、2006年には「キャンドルライト・リフレクションズ」というショーで初めてアメリカンウォーターフロントから別のテーマポートに登場します。またこの年から2007年にかけて着せ替えコスチュームのバリエーションが増えます。

そうして2008年のTDR25周年にあわせ販売され始めたパークキャスト・コスチュームシリーズ以降、一般への認知度も爆発的に高まり、ネット上でも売買が高値で取引されるまでのブームの走りが訪れます。恐らく誰もがよく知るパークキャストの着せ替えという点がファンも一般人も巻き込んで火をつけたんじゃないでしょうか。2009年にもなれば誰もが知るダッフィーのグリーティングは90〜120分待ちを記録する事態になります。各種経済誌もこぞって取り上げるようになり、フジテレビの月9ドラマでも「ダッフィー」という言葉が出るほどの認知度となりました。そして2010年、ダッフィーの友達「シェリー・メイ」という女の子版が発売された上、遂に「ケープコッド・クックオフ」というショーレストランで常設ショーとして「マイフレンド・ダッフィー」を上演するまでになるのです。この年には「食べるラー油」などに並んでヒット商品としても肩を並べるまでになっています。しかし勢いはまだ衰えません。

今年には正式なグリーティング施設「ヴィレッジ・グリーティングプレイス」がケープコッドにオープン。来年、2012年には春季スペシャルイベントとして「ミッキーとダッフィーのスプリングヴォヤッジ」というスペシャルイベントと「ディズニーシー・ホテルミラコスタ」にダッフィーのスペシャルルームが登場予定です。留まるところを知りません。

「ダッフィー」効果は舞浜の歴史としても大きな要素となりました。かつて東京ディズニーシーがグランドオープンして以降、東京ディズニーランドのイメージとのギャップから5周年頃までは数字としては厳しい状態が続いていました。しかしこの「ダッフィー」が徐々に浸透し、ヒットに至ったことで、一度しか訪れていなかったゲスト層を再びディズニーシーに連れ戻しただけでなく、パークの客単価をランドのそれとは比べ物にならない程度にまで引き上げる事に繋がりました。おかげで戻ってきたゲストは成長し続けるディズニーシーの新たな魅力を再認識し、今ではディズニーランドと同等の集客力を誇る人気施設ともなりました。

更に2010年以降本国や他国のパークにも「Duffy」という名称は逆輸入され、「Duffy the Disney Bear」として人気を博しています。こうして見てみると単なるヒット商品ではない「ダッフィー」についてかなり興味が沸きませんか?舞浜の東京ディズニーリゾートと共に、今後の「ダッフィー」の展望というのは実に面白い観察対象だと思います。

とりあえずまだ持っていない方はこのクリスマス、「ダッフィー」を手に入れてみてはいかがでしょう?